【施工事例】無停電工法で実現|24時間稼働 物流倉庫の高圧ケーブル更新工事
工場・倉庫・商業施設などの高圧受電設備は、長年にわたり事業の安定稼働を支える重要なインフラです。しかし、高圧ケーブルには設計寿命があり、経年劣化を放置すると地絡事故・長時間停電・機器焼損につながりかねません。今回ご紹介する施工事例は、布設後 20 年が経過した大規模物流倉庫における、高圧引込ケーブル(6.6kV CVT(EE))の更新工事です。365 日 24 時間稼働する施設特有の制約の中、仮設発電機による代替送電方式を採用し、系統切替時の瞬時停電2回のみで工事を完遂しました。
1. ご依頼の背景:高圧ケーブルの経年劣化と更新の必要性
高圧引込ケーブルの更新目安は、一般的に布設環境により 15 年〜25 年と言われています。屋外露出布設や直接埋設では 15〜20 年、管路引入で 20〜25 年が目安で、今回の案件は布設後 20 年を経過したタイミングでの更新となりました。
高圧ケーブルの経年劣化のうち、近年特に注目されているのが水トリー(湿気で絶縁体内部に進行する樹枝状の劣化)です。20 年前は外部半導電層をテープ巻きで仕上げる「E-T タイプ」の高圧ケーブルが一般的でしたが、現在は JEAC(電気協会の技術指針) も推奨する E-E タイプ(外部半導電層を絶縁体と一体押出した最新世代の高圧ケーブル)が標準となっています。E-E タイプは絶縁体との界面が平滑で異物混入を防ぐため、耐水トリー特性に優れ、水分の多い地下管路や倉庫設備に適しています。今回の更新では 6.6kV CVT(EE) を採用しました。
また、本案件は 365 日 24 時間稼働の物流倉庫であり、長時間停電は事業に直結する重大リスクです。そこで、施主様との綿密な事前打合せのもと、仮設高圧発電機による代替送電方式を採用。系統切替時に発生する瞬時停電を計 2 回に抑え、操業を止めることなくケーブル更新を完遂しました。
2. 現場の特徴と施工上の課題(24 時間稼働 × 無停電施工)
今回の現場は、365 日 24 時間稼働する大規模な物流倉庫です。荷受け・仕分け・出荷の各ラインが昼夜を問わず動いており、冷蔵・冷凍ユニット、ベルトコンベア、大型空調、コンプレッサーなどが常時稼働しています。高圧引込ケーブルを更新するには電源系統の切替が必要となりますが、長時間・予告なしの停電は許容されないという制約がありました。

現場の既設電柱と高圧引込ケーブルの全景。本案件では電柱・既設PAS は継続使用し、ケーブルのみを引き直しました。
この制約を解決するため、本案件では 仮設高圧発電機による代替送電方式を採用しました。電力会社系統からの受電を一時停止し、その間は仮設発電機から倉庫負荷へ送電。新ケーブルへの切替が完了したら発電機側を開放し、電力会社系統へ復帰させます。系統切替の瞬間にのみ瞬時停電が発生しますが、それ以外の作業時間中は通常電力を維持できる方式です。
- 施主様の操業スケジュールを把握したうえでの瞬時停電タイミング調整(荷動きの少ない時間帯、定期メンテナンス枠の活用など)
- 電力会社・電気主任技術者・保安協会との事前協議(停電届、作業計画書、緊急時連絡体制)
- 仮設発電機の容量・接続手順・切替段取りの綿密な事前計画(当日の手戻りゼロを実現)
本件では施主様と幾度もの打合せを重ね、稼働への影響が最も少ない時間帯を特定。夜間作業を中心に発電機側で代替送電を確保しながら、屋外・屋内の端末処理から相回転確認まで完了しました。
3. 施工の流れ(時系列 6 工程)
高圧ケーブル更新工事は、電気工事の中でも特に厳密な手順管理が求められる作業です。本案件では発電機バックアップによる無停電施工を中心に、以下の 6 工程で実施しました。
施主様の操業スケジュールを踏まえ、瞬時停電を発生させる切替時刻・発電機接続手順・緊急時の復旧段取りまで詳細にすり合わせ。電力会社への停電届、電気主任技術者との作業計画書の確認、保安協会への連絡など、関係各所との調整を当社が窓口となり一括で対応しました。
仮設高圧発電機を倉庫受電点近傍に据付け、絶縁試験で安全を確認した上で起動。計画時刻に電力会社側引込開閉器を開放し、ただちに発電機側へ切替えます。切替の瞬間に瞬時停電が発生しますが、施主様と事前に合意したタイミングであり、稼働ラインへの影響を最小化しました。切替後は倉庫の全負荷を発電機が支え、電力会社系統側を作業区間として確保します。
作業区間を確保したのち、検電器による無電圧確認と短絡接地を実施。残留電荷による感電事故を防止した上で、既設ケーブルを撤去します。続いて新設の 6.6kV CVT(EE) ケーブルを布設。CVT(EE) は内部半導電層・絶縁体・外部半導電層を 3 層同時押出した構造で、耐水トリー特性に優れた最新世代の高圧ケーブルです。

電柱間に布設した新設の高圧引込ケーブル。既設経路を活用しつつ、新ケーブルが安全に支持される配線ルートを確保しました。

端末処理に向けたケーブル先端の段剥ぎ。シース・銅遮蔽層・絶縁体を定められた寸法で正確に剥がします。寸法精度がそのまま端末処理の品質を左右します。

高圧ケーブル更新の品質を最も左右するのが、この端末処理工程です。本案件では 3M ハイ-KタームⅡ-EM のプレハブ形端末キットを採用し、ケーブルのシース・半導電層・絶縁体・銅遮蔽層を定められた寸法で段剥ぎした上で、ストレスコーン(電界緩和部材)を装着しました。屋外(電柱側)・屋内(キュービクル側)の両方に施工しています。

夜間作業時の屋外端末処理。投光器を用意し、暗所でも精度を落とさない作業を実施。熟練職人の経験と事前の手順確認があってこそ実現できる工程です。

屋内端末はキュービクル内の高圧母線端子へ接続し、併せてケーブル遮蔽層の接地処理を確実に施工。接地が不十分だと漏電検知や地絡継電器の動作にも影響が出るため、非常に重要な工程です。

新設ケーブルの端末処理が完了したら、既設PAS(高圧気中開閉器)負荷側の三相端子(WL / VL / UL)に対して、新ケーブルがどの相にどう接続されているかを相識別・結線確認します。誤結線は復電後の機器破損や逆相事故に直結するため、慎重な確認が必要です。

夜間作業での既設PAS負荷側の結線確認。新ケーブルの端末を既設PAS下端へ接続する際、相順が既設設備と一致していることを必ず確認します。
続いて絶縁抵抗計(メガー)による絶縁抵抗測定を実施し、ケーブル・機器側ともに規定値(高圧回路では一般に 2000MΩ 以上を目安)を満たしていることを確認。重要案件では高圧耐電圧試験(商用周波 10,350V × 10 分間の印加)を追加実施するケースもあり、本件でも施主様・電気主任技術者のご判断に沿った試験を実施しております。

復電前に必ず実施するのが相回転確認(正相/逆相確認)です。三相電源の R-S-T 相順が既設設備と逆になっていた場合、三相誘導電動機は逆回転を始めます。今回の倉庫のようにコンベア・ポンプ・空調コンプレッサーを多数抱える施設では、逆相による機器破損・冷媒逆流・生産ライン停止など大規模事故に直結しかねません。本件では HIOKI PD3129-10 相回転計を用い、受電点とキュービクル二次側の双方で相順の一致を確認しました。
相回転確認後、発電機側を開放して電力会社系統側を再投入。切替の瞬間に 2 度目の瞬時停電が発生しますが、これも事前合意済みのタイミングで、安全に倉庫負荷を新ケーブル経由の電力会社系統へ戻しました。

復電後はキュービクル内の温度・異音・計器表示の推移を一定時間監視。整然と配線された新設端末と受電機器類を、施主様立会いのもと最終確認して引渡しを完了しました。
4. 技術ポイント解説
24 時間稼働の倉庫では、長時間停電は出荷遅延・冷蔵設備停止に直結します。本案件では仮設高圧発電機を倉庫受電点近傍に設置し、既設系統を一旦発電機側へ切替えた後、ケーブル更新作業を実施しました。系統切替の瞬間にのみ短時間の瞬時停電(計 2 回)が発生しますが、それ以外の作業時間中は通常電力を維持できる方式です。
本工法では発電機と商用電源の並列運転は実施せず、必ず開放→閉路の順次切替で行います。これは同期投入による逆相事故を防ぐためで、安全性を最優先にした選択です。発電機容量・燃料計画・切替手順は事前にシミュレーションし、当日は施主様立会のもと安全確認を経て実施しました。完全無停電(同期投入)方式と比べコストを抑えつつ、業務影響を最小化できる現実的な選択肢として、24 時間稼働施設の高圧ケーブル更新に多く採用されています。
高圧ケーブル更新における最大の判断基準のひとつが、水トリー(湿気で絶縁体内部に進行する樹枝状の劣化)への耐性です。20 年前は外部半導電層をテープ巻きで仕上げる「E-T タイプ」が一般的でしたが、テープ巻きの厚みむらが絶縁体との界面に微小な隙間を生み、そこから水分が侵入して水トリー劣化を進行させる弱点がありました。
これに対し本案件で採用した 6.6kV CVT(EE) は、導体上に「内部半導電層/絶縁体/外部半導電層」の 3 層を同時押出加工した構造で、絶縁体との界面が平滑になり異物混入を防ぎます。これにより耐水トリー特性が大幅に向上しており、JEAC(電気協会の技術指針)でも波及事故防止のため E-E タイプ採用が推奨されています。地下管路や湿度の高い倉庫設備での使用に最適です。
高圧ケーブルの両端は、そのまま機器につなぐと電界が集中して絶縁破壊を起こします。これを防ぐため、端末部にはストレスコーンと呼ばれる電界緩和部材を取り付ける必要があり、その処理方法を「高圧ケーブル端末処理」と呼びます。
従来の端末処理は職人が半導電テープ・絶縁テープを 1 巻ずつ手巻きする「テープ巻き式」が主流でしたが、巻き厚や張力のばらつきが絶縁性能に直結するため、仕上がり品質が熟練度に大きく依存する弱点がありました。本案件で採用した 3M プレハブ形(差込み形)端末は、工場で成形・試験済みのゴムストレスコーンを現場で差し込むだけで終端処理が完了する新しい工法で、夜間作業や限られた切替時間内での施工に適しています。
5. 使用部材:6.6kV CVT(EE) + 3M ハイ-KタームⅡ-EM 92-E73X(N)-EM
本案件では新設ケーブルとして 6.6kV CVT(EE)(3 層同時押出型 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル、JIS C 3606 準拠)を採用。端末処理には 3M ハイ-KタームⅡ-EM 92-E73X(N)-EM プレハブ形端末キットを使用しました。
▼ 6.6kV CVT(EE) ケーブルの特徴
- 3 層同時押出構造:内部半導電層・絶縁体・外部半導電層を一体成形、界面が平滑で異物混入を防ぐ
- 耐水トリー特性に優れる:E-T タイプ(外部半導電層がテープ式)と比較して水分侵入耐性が高い
- JEAC 推奨:電気協会の技術指針で波及事故防止のため採用が推奨されている
- 地下管路・湿度の高い環境に最適:物流倉庫・地下埋設・トンネル・水中ポンプ等に多く採用
▼ 3M ハイ-KタームⅡ-EM の特徴
- プレハブ形差込み式:ストレスコーンを差し込むだけで端末処理完了、テープ巻き作業不要
- シリコーングリース内蔵:工場であらかじめ塗布済み、現場でのグリース塗布ミス・ムラを排除
- EM(エコマテリアル)対応:環境配慮型 EM-CE / EM-CET ケーブルにも使用可能
- 対応サイズ:14〜22mm² と 38〜60mm² の 2 タイプ、幅広い引込容量に対応
- 屋内屋外兼用:屋外端末は雨がい付き、屋内端末はコンパクト形
- 作業ゲージ同梱:段剥ぎ寸法が誤差なく決まる仕組みで、仕上がりの品質ばらつきを最小化
高圧ケーブル更新の品質は、ケーブル本体の選定(CVT(EE) など)と端末処理工法(プレハブ形端末)の両方に依存します。本案件では両方とも業界推奨の最新世代を採用し、20 年後の次回更新まで安心して使用できる品質を確保しました。
6. 高圧受電設備の更新目安(業界データ)
参考までに、主要な高圧受電設備の一般的な更新目安を業界データベースで整理しました。ご自社設備の更新計画を立てる際の目安としてご活用ください。
※本表は業界における一般的なデータです。本案件はケーブルのみを更新し、PAS・キュービクル本体・VCB は継続使用しています。
| 設備 | 一般的な更新目安 | 主な劣化兆候 |
|---|---|---|
| 高圧ケーブル(CVT・屋外) | 15〜20 年 | シースひび割れ、水トリー、絶縁抵抗低下 |
| 高圧ケーブル(CVT・屋内) | 20〜30 年 | シース変色、端末劣化 |
| PAS(高圧気中開閉器) | 15 年 | 動作不良、碍子汚損・ヒビ |
| キュービクル本体 | 20〜25 年 | 錆び、扉不具合、計器類の劣化 |
| VCB(真空遮断器) | 15〜20 年 | 接触抵抗増、動作回数超過 |
※上記は業界における一般的な目安です。実際の劣化速度は設置環境(塩害・振動・熱・紫外線等)や使用頻度により変動します。正確な更新時期の判断には、現地点検と計測データに基づく診断が必要です。
7. 喜多電設の施工のポイント(3 本柱)
8. 施工写真ギャラリー


キュービクル内の端末処理と遮蔽層接地(左)、計器用変成器(PT)二次側配線(右)。整然とした内部配線が、仕上がり品質の高さを物語ります。
9. よくあるご質問
- 電気設備の固定費削減をお考えの方へ:電子ブレーカー設置による基本料金削減のご提案
- 当社の他の施工事例:施工事例一覧
- 会社概要・対応エリア:喜多電設株式会社について
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※本記事に記載の更新目安・耐用年数・技術解説は業界における一般的なデータを引用しており、当社施工による保証値ではありません。実際の劣化速度・更新時期は設備の設置環境・使用頻度等により異なります。本件で実施していない工程に関する記述は一般論であり、本案件の実施内容は施工概要および施工の流れセクションをご参照ください。正確な診断は現地調査にてご確認ください。また、施工事例の写真には施主様情報の特定につながる箇所への加工を行っている場合があります。
